コラム

Adobe Marketo Engageのメール配信ミスから学んだ、5つの運用見直しポイント

弊社ではAdobe Marketo Engage(以下、Marketo)などマーケティングオートメーション(以下、MA)の活用支援サービスの一環として、「MA運用代行サービス」を提供している。MAを活用するにあたり、「手を動かす部分は外部にまかせて社内では企画をおこないたい」や、「急な退職や異動により、ツールを触れる人材が欠員した」などの運用に関わる部分をアウトソースするニーズに応えるサービスとなっている。

MAの運用には、業務の設計や、スタッフの確保とトレーニング、イレギュラーに対応できるスキルが必要だ。パワー・インタラクティブでは、以下3つの要素によって安定した運用代行オペレーションを提供している。

 ①専門スキルを持つチーム体制
 ②コンサルタントによる業務フローの定義、見直し
 ③ミス発生時の対応や評価方法のルール化

今回は運用代行サービスを推進するなかで、あるお客様のメール配信業務で発生した設定ミスと、それを受けて見直しをおこなった取り組み内容を紹介したいと思う。

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トラブル発生! メールの差し込み失敗

Marketoには、データベースの値を差し込むトークン機能が用意されている。メールの冒頭に「企業名」や「名字」が表示されるようにして、パーソナライズされたメールを送信する際によく使われる機能だ。

今回は顧客満足度アンケートへの回答依頼メールの案件で、メール文中にアンケート回答に必要な「顧客コード」を差し込んでほしいと依頼があった。

依頼内容を実現するために、Marketoのプログラムメンバー カスタムフィールド(以下、PMCF)機能を使って「PMCF01」のフィールドに値をセットして準備した。値を差し込むには「{{member.PMCF01}}」のトークンを本文に記述すれば問題ない。ところが作業に当たったスタッフが、PMCFを利用したトークン記述が初見だったため、不要な記述が残っていると誤解して削除してしまった。もちろんテスト配信をおこなってチェックはしていたが、様々な要因で見過ごされ、結果的に差し込み箇所が空白(値が何も入っていない)状態で送信されてしまった。

緊急連絡先はメンバーに周知されている?

本番配信後の確認で顧客コードが空白になってしまっていることが発覚。急いでお客様に状況の共有が必要となった。しかし現場スタッフは、あらかじめ用意してあったはずの

・緊急時の対応フロー
・緊急連絡先の一覧

の保管場所が把握できておらず、第一報に遅れが出てしまった。フローは用意していたものの、その周知や理解が十分でなく、実際に必要な場面では活用しきれないという残念な結果となってしまった。
また、緊急連絡先の内容も一部に古い担当者の情報が残っており、メンテナンスに課題が残るものだった。

図表1:緊急時対応フローの例

その後、差し込みミスのリカバリーはスムーズにできたが、根本的な対策としていくつかの取り組みをおこなったので、そちらも紹介してみたいと思う。

取り組み1 業務レベルの整理

このお客様の運用代行業務ではメール配信業務のなかにも手順が異なるものが混在していた。データインポートの有無、差し込みの有無 などの違いだ。万が一ミスがあったときの影響度合いも異なるため、レベル分けをして業務整理をおこなった。

図表2:業務レベルの整理表

このうち、レベル2や3は、インポートや差し込みに伴うミスも懸念されるので、より慎重な対応が必要な業務であるとお客様とも意識あわせをおこなった。

取り組み2 重要業務はお客様もチェックに参加

上記のレベル2と3は頻度が少ないが重要度は高いため、お客様からの要望もあって先方もチェックに参加するようにフローを変更した。従来は全て弊社側で完結させていたところに、チェックリストに「クライアント確認欄」を追加してチェックシートを回覧するようにした。

またお客様はMarketoをあまり触ったことがないため「設定のチェックをお願いします」とチェックシートを回覧しても実際問題として操作できない状況だった。そこでMarketoに不慣れな方でも確認できるよう、確認手順のレクチャーもあわせて実施することにした。

確認ステップが増えたことで配信までの日数も増加したが、お客様側の協力もあり、早めの原稿提出や確認時間の確保をしていただいて対応をおこなっている。

図表3:重要業務への対応の変化

取り組み3 Marketo承認権限の絞り込み

以前は作業スタッフにも配信の予約設定が可能な権限を付与していたが、今回とは別の配信案件で誤った配信予約をしてしまうミスがあったため、最終の承認権限は限られたメンバーにだけ付与するように見直しをおこなった。

一方で、作業スタッフに承認権限がないと困る場面もあり、例えば動作テストの際にすぐ確認できないという弊害も出てくる。だが工程のスムーズさよりは誤承認の防止を優先して、権限の絞り込みを採用することにした。

図表4:Marketo承認権限の変化

取り組み4 承認実施日の固定化

承認権限の絞り込みとあわせて、お客様からの提案で、プログラム承認を実施する曜日の固定化をおこなった。具体的には、「火曜日と金曜日の17時に、プロジェクトリーダーが承認作業(配信設定の有効化作業)を実施する」とした。固定化することで、自然と承認業務が整理された状態になりミスも防止できるようになった。

さらに、承認業務は1名ではおこなわず、必ずプロジェクトリーダーとサブリーダーの2名でおこなうようにした。プロジェクトリーダーのMarketoを画面共有しながら、逐一手順に誤りがないか双方で確認しながら進めている。

承認日の固定化はお客様側にもメリットがあるようで、社内の他部署からの配信依頼が殺到しているときに、スケジュールの線引きの理由付けに使っているとのこと。「火曜と金曜にしか承認作業をおこなわないので、それにあわせて原稿を準備してください」として、なし崩しの突発的な配信依頼を防いでいるそうだ。

図表5:承認実施日の変化

取り組み5 緊急連絡先の周知、定期的なメンテナンス

せっかく緊急フローを定めていても、現場スタッフが認知していなければ役立てられない。今回は十分に認知されていなかった反省があったので、以降のチーム定例ミーティングでは、定期的に周知と内容のアップデートをするように取り組んでいる。またこれはお客様との定例ミーティングでも取り交わしておき、お客様とパワー・インタラクティブどちらの人の入れ替わりがあったときも対応できるようにしている。

図表6:緊急連絡先の周知についての変化

今回は実際に起こった配信設定ミスと、その後の取り組みについて取り上げた。ミスが起こる環境をいかに「仕組み」で改善するのかに取り組んでいる。MA運用のヒントにしていただければ幸いだ。

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高月 大輔

オペレーションPro.グループマネジャー

高月 大輔

マーケティングオートメーション活用支援

Webディレクターとして大手・中堅企業を中心に多数のWebサイト構築を手がける。その後、マーケティングデータアナリストへ転向。 Googleアナリティクスでのアクセスログ分析やBIツールを使ったダッシュボード構築に従事。現在はMarketoの活用支援コンサルティングにも領域を広げ、自社のMA運用代行チームのリーダーとして活動している。
またAdobe社のMarketoトレーニング講師も担当し、分かりやすい解説が好評を得ている。

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