セミナーレポート

820万拠点の法人データベースが日本のBtoBマーケティングを加速する

パワー・インタラクティブは株式会社ランドスケイプの吉川様、小林様と共に、2021年9月17日、オンラインセミナーを開催しました。ランドスケイプ社は、有名企業から町の商店まで、国内拠点網羅率99.7%の日本最大の法人データベースを独自に構築、サービス提供しています。今回のセミナーは、法人データベースに基づいたBtoBマーケティングをテーマにLiveインタビュー形式で進めました。

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国内拠点カバー率99.7%の法人データベースとは

パワー・インタラクティブ 広富:
ランドスケイプ社とは、長いお付き合いになります。協業によるサービスも生まれており、2012年よりランドスケイプ社の法人データベースを活用し自社サイトを訪問した人の企業名や属性をGoogleアナリティクス上で確認できるサービス「LBC for Googleアナリティクス」を提供しています。また、昨年9月にはランドスケイプ社のAIエンジン「Rating2.0」を活用した新たなサービス「企業情報解析ツール2.0」をリリースしました。

これまでのランドスケイプ社との取り組み

2012年~ LBC for Googleアナリティクス
アクセスログに企業属性を付与。どんな会社がWeb閲覧しているかが分かる。管理画面上で企業名、業種、従業員数がわかる。

LBC for Marketo
MAツールに企業属性を付与。高度な名寄せでデータの抜け漏れを補正。歯抜けのあるデータ、ブレがあるデータを補正し、さらにLBCのデータを付与。

2021年~ 企業情報解析ツール2.0
お手本データやサイト上の行動履歴を利用してAIが見込みリストを出力。広告出稿や営業リストに活用できる。

パワー・インタラクティブ 広富:
これまで提供しているサービスは全て、法人企業データベース「LBC」がベースとなっています。「LBC」のデータは、どのようにして集めているのでしょうか。

小林様:
公開情報から集めています。登記情報、有価証券報告書、ホームページのクローリング、ゼンリン地図情報、電話帳データなどを情報ソースとし、「与信」ではなく「マーケティング」として使うための網羅性の高いデータベースを構築しています。
商業登記簿や法人マイナンバーは本社単位で付与されているのですが、LBCでは本社だけでなく支店や事業所(工場等)も含めて構築し、企業グループを一元管理しています。グループトップの親会社から子会社、孫会社、事業所までを名寄せした状態で確認でき、お客様の持っている顧客データと突き合わせることでグループ内の未開拓の企業や事業所を把握できます。このためABM(アカウントベースドマーケティング)目的でお問い合わせいただくこともあります。

図表1:法人企業データベース「LBC」とは

パワー・インタラクティブ 広富:
これだけの量のデータベースをどのようにメンテナンスしているのですか。

小林様:
実際に目検でデータの更新を確認する部隊に2,000人以上が所属しています。その部隊が、毎日公開情報を見に行き、更新されている箇所を適宜反映するという体制を組んでいます。

図表2:データメンテナンス

DXの阻害要因、ダークデータを生き返らせる

パワー・インタラクティブ 高月:
本セミナー冒頭のzoomでの参加者アンケートから、データベースの運用で困っていることとして、「企業データが古い、重複が多い」「データが一元管理できていない」、この2点の回答が多かったです。これらは企業がデータベースを長く運用していると直面することが多い課題ですね。

小林様:
企業が蓄積しているデータは3種類に分かれます。
①クリーンデータ=ビジネスにおいて有効と判断され活用できるデータ
②ダークデータ=有用な情報であったとしてもその価値を認識しておらず、死蔵されている(休眠)データ
③ROTデータ(ゴミデータ)=古かったり重複が多かったりと利用価値のないデータ
企業が保有するデータの57%が死蔵データと言われており、LBCと突き合わせることで生き返らせことができます。

パワー・インタラクティブ 広富:
BtoBでデジタルマーケティングを行う際に、営業から名刺を集めるところからスタートしている場合が多いです。その中で6~7割ぐらいが使えないデータという場合もあります。この使えないデータをランドスケイプ社では生き返らせることが出来るとお聞きしましたが、本当ですか。

小林様:
企業データとLBCとのマッチング処理を実施することで、例えば「社名が違っている」「移転前の住所になっている」などを修正することができます。

吉川様:
データを生き返らせ顧客データベースを構築することはその後の施策にも大きく影響します。例えば、展示会で名刺を集めた後、その顧客データと突き合わせることもできます。「既存なのか新規なのか」「過去の展示会で名刺交換したことがあるのか」などをわかって営業するのと、わからず営業するのとでは動きが違ってきますね。つまり最初はデータ整備が重要です。大企業では保有データが多いので「過去何年分のデータに絞る」「目的に応じてデータ整備の範囲を決める」など、どこまでやるかを決めなければなりません。

DX推進のベースとなる「NICE」コンセプト

パワー・インタラクティブ 広富:
最近はDXに注目が集まっています。データに深い造詣を持つランドスケイプ社として、DX推進についてはどう考えていますか?

小林様:
まずはデータを綺麗にすることが大切だと考えています。DX推進には「システム」「人材」「データ」の3要素が大事ですが、システムと人材の下に基盤としてのデータがあると考えています。

吉川様:
総務省が出しているDXの課題についての資料を見ると、一番が「人材不足」で、その次に「システムが古い」となっており、データそのものの話は出てきません。データは重要なのに、後回しにされているのが現状です。

パワー・インタラクティブ 広富:
DX推進に取り組むとデータの重要性がわかると思います。それでは、データ統合、データ整備の進め方を具体的に教えてください。

小林様:
4つの段階に分けてデータを綺麗にしていきましょうという「NICE」コンセプトを提唱しています。
①標準化(Normalize)=データの粒度のそろえる
②一元化(Integrate)=システムに共通コードを付ける。読みやすくする
③補正(Correct)=データの欠落を補完・更新する
④属性付与(Enhance)=正しい属性情報を付加する。通常の営業活動では得られない情報を付加する

パワー・インタラクティブ 広富:
どの段階で苦労されているお客様が多いですか?

小林様:
①標準化です。本社なのか事業所単位なのかという粒度がバラバラになっていることが多く、例えば「10万レコードある」という場合でも本社ベースにして(事業所を統合)重複を省くと実は5万社しかなかったということもあります。ここを綺麗にしっかりと固めることがABMやDXの成功につながると考えています。

吉川様:
「DXをしたい」とトップダウンで取り組むケースも多いのですが、各事業部のデータを全社最適することを考えると、①標準化、②一元化でつまずきます。各事業部で違うS aaSを使っていたり、そもそもフォーマットが違っていたり、入力のルールが違っていたり、メンテナンスをしていなかったりと、全社ルールが無く各事業部でデータを管理しているのが現状だからです。

AIによる見込み企業のスコア化

パワー・インタラクティブ 広富:
ランドスケイプ社では、データに基づいたマーケティングを促進するサービスをスタートしたそうですね。

小林様:
はい、機械学習エンジン「Rating2.0」です。「Rating2.0」は、ターゲティングの領域をAIの力で自動化するものとして2020年にサービス開始しました。

図表3:Rating2.0のデータの流れ

NICEで綺麗にしたデータと、Webの行動情報を教師データとして学習させ、「次に攻めるべき企業はここですよ」という見込み度の高い企業リストを、LBCをベースに抽出できる仕組みです。マーケティングオートメーションに入っているNamedの(名刺情報のある)お客様のWebの行動情報はもちろん、名刺交換していないホワイトスペースと呼ばれる未開拓企業のWebの行動情報も活用することができます。

パワー・インタラクティブ 広富:
未開拓企業のWebの行動情報の取り込みができるんですね。

吉川様:
弊社では企業の固定IPアドレスをデータベース化しているため、マーケティングオートメーションに入っていない企業の行動情報も把握できます。それを機械学習エンジンに取り込むことで、Webの行動情報と、NICEで綺麗にした過去のデータとを組み合わせ、「今どこを攻めるべきか」を優先順位付きで出すことができます。

パワー・インタラクティブ 広富:
Webの行動情報が取れるということは、まさに今動きのある企業の情報がつかめるんですね。

小林様:
例えば「最近オンラインに出現した企業がどこか」を把握できますし、「既に受注している企業と同じような動きをしているが、まだ取引のない企業はどこか」という2つの視点からのデータも出せます。このようなリストを自動的に抽出することができます。マーケターの勘や経験に頼るのではなく、俯瞰してリスト化できるのです。

今、狙うべき企業をAIが教えてくれる「企業スコア予測サービス」

パワー・インタラクティブ 高月:
このランドスケイプ社のRating2.0のエンジンを利用して「企業情報解析ツール2.0」というサービスを昨年9月に弊社からリリースしました。自社の商材に関心の高い企業リストをAIが出力してくれるサービスです。

既存データに様々な情報を付与したとしても、その中からターゲットを見極めるのは従来、人力で対応していました。データが足りない、データがバラバラという課題があると、さらに作業が大変になります。ターゲットの見極めも難しいです。このような質の悪いデータから出てくるリストは有効なアクションには繋がらず、現場からの信用をなくしてしまうこともあります。
一方「企業情報解析ツール2.0」を活用した場合、データが足りない、データがバラバラといった課題はLBCで解決でき、ターゲットの見極めもAIに任せることができます。リストには見込み度スコアが0~100点で付くので、どこから狙うべきか優先順位もわかります。経験と勘に基づいたターゲティングではなく、データに裏付けされたリストを基に現場が動くことができるのです。

「企業情報解析ツール2.0」ではこの他に、Web広告とのリスト連携、Webサイト訪問企業名判別、MarketoやHubspotなどのMAと連携し、MAのデータに企業属性データを付与など、データに基づいたマーケティング活動を可能にします。

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第2部 Q&Aコーナー

Q:
マーケティングオートメーションに入っていない企業のWeb行動情報を取得できるのは、LBCのデータからでしょうか。

小林様:
LBCのデータから、アノニマス(匿名)データを企業ベースで可視化することができます。固定IPアドレスと各企業の情報とを紐づけているからです。

吉川様:
このサービスをご導入いただいた企業様は、「思ったより競合会社が見に来ている」ということがわかることもあります。

Q:
似たようなサービスが他社でも複数ありますが、他社サービスとの違いは何でしょうか。

小林様:
裏側の仕組みとしてLBCがあることから、企業データの件数が多く、網羅率が高いです。また弊社独自の仕組みとして「Rating2.0」を通じてオンラインデータを使っていることも特徴です。
「Garbage In, Garbage Out(ガベージ・イン、ガベージ・アウト=ゴミを入力するとゴミが出力される)」と言われるように、ゴミデータをAIに入れてもゴミしか出てこないので、いかにゴミデータを少なくするか、「NICE」の考え方とデータの網羅性が重要だと思います。

吉川様:
820万件の企業拠点データを裏側に持っていることと、見込み企業リストをスコア付きで出すことは他社ではできないのではないでしょうか。

パワー・インタラクティブ 高月:
Webの行動情報を教師データとしてスコアを算出するという点について、まさに今Webサイトにアクセスしている新鮮なデータを取り込むことでスコアがアップデートされていくことも特徴だと思います。

吉川様:
営業マンにアプローチする前に、57%の人が購買するかどうかをあらかじめ決めていると言われています。つまりWebで事前にいろいろ調べています。ABMをする上でもWebの行動情報は重要だと考えています。

小林様:
GoogleAnalyticsにスコアのデータを戻す、さらにFacebook広告やGoogle広告にも繋げていけるのは弊社独自です。

Q:
「企業情報解析ツール2.0」はSFAとの連携は可能でしょうか?

吉川様:
直接SFAにスコアを渡すことはできませんが、別商品で「uSonar(ユーソナー)」というサービスがあり、これを導入してもらうことで連携できます。

Q:
Webの行動情報は中小規模の会社であれば使えるかもしれませんが、IPアドレスが1つの大企業であれば、あまり使えないのではないでしょうか。

小林様:
どの部署か特定できないと使いづらいのではないかというご指摘だと思いますが、どの商材のページを見ているのかから、総務なのか、営業なのか、マーケティングなのかなど、部署単位で仮説立てはできるのではないでしょうか。例えば、お客様企業において、とある商材に興味が出てきた、会議の中で話題になっている、部署単位で話題になっているという場合、同じIPアドレスからアクセスしてくるユーザー数が増えるという現象があります。急に1週間のユーザー数が増えたとなると、今攻めるべきタイミングだと測ることも可能です。

吉川様:
弊社がクライアントと商談した後、その会社が弊社のWebサイトにアクセスされるケースもよくあります。大企業であればあるほどホット度がよくわかったりします。もちろん企業グループ全体でIPアドレスが設定されている場合があり、分かりづらいこともあります。その場合、オフラインの行動と掛け合わせて推定を入れなることもあります。

小林様:
「Rating2.0」の文脈で言えば、MAのデータも活用ができます。IPアドレスだけだとどうしてもデータが不足するので、MAのNamedのデータと掛け合わせて1つにまとめて、新しいスコアとして抽出することができます。

セミナー事務局より

今回はランドスケイプ社がデータ整備で重要視する「NICE」というコンセプトや、膨大なダークデータを生き返らせ巨大かつ最新のデータベースを構築する体制から、データベース整備に必要なキーポイントが見えました。

◆当日の動画をオンデマンド動画として公開しております。以下よりご覧ください。
820万拠点の法人データベースが日本のBtoBマーケティングを加速する(前半)
オンデマンド動画はこちら

プロフィール

吉川 大基(きっかわ だいき)様

株式会社ランドスケイプ サポート本部 事業開発グループ 執行役員

プロフィール

小林 千也(こばやし ゆきや)様

株式会社ランドスケイプ
サポート本部 事業開発グループ サブマネージャー

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