事例

【後編】株式会社堀場エステック Marketo導入して6年、営業に寄り添い、進化を続けてきたデジタルマーケティングは第5ステップへ

→ インタビュー前編
前編では、MAプロジェクトの立ち上げについてお聞きしています。

第4ステップは、「デジタルマーケティングチーム」が発足、インサイドセールスを導入し、営業進捗を追う

今年に入って新たな動きが見られますね。

これまで営業推進部と営業部が連携して取り組んできたのですが、今年からインサイドセールスが営業推進部に2名加わり、チーム名も「デジタルマーケティングチーム」に変えて、より機能的になりました。今まで営業推進部は営業のサポート的役割だったのが、デジタルマーケティングという営業変革の一つの手段を担う立場になったのです。インサイドセールスの2名は営業経験者で、そこは私がこだわったところです。インサイドセールスは、データ+経験でやっていく仕事になるので、色々なテクノロジーやしくみを活用して業務効率をあげていくことに抵抗がない人が適材であると上層部を説得しました。

会社にデジタルマーケティングを認めてもらったということですね。

はい、まだまだこれからだと思いますが動きやすくなりました。今まで営業推進部へは、カタログ制作や展示会出展等、いろいろな要望がきていましたが、デジタルマーケティングでは、目的と施策が紐づいてきます。営業はどこに注力し、どこをデジタルマーケティングが担うのかが明確になります。営業全員からの理解、連携はまだ課題としてありますが、デジタルマーケティングで売上げに貢献していく考えは、立上げ当初から変わっていません。今年は第4ステップとして、目標商談数を営業の上層部と決め、そこに向かって進捗を追いたいと考えています。

現在のインサイドセールスも含めた育成フローを教えてください。

母数となるリードの獲得は、オフラインはイベントとセミナー、オンラインはWeb問い合わせ、資料ダウンロードが中心です。それぞれ担当者がいて、目標達成するための施策を考えています。さらに育成プログラムをいくつか用意し、スコアリングを活用してお客様の興味、関心を高めていくプロセスを私が担当しています。スコアが100点を超える、または問い合わせがあるとMQL(有望リード)となり、インサイドセールスが電話をかけます。商談の見込みがあれば、インサイドセールスから営業へ引き渡し、一方、営業に引渡しできなかったリードはリサイクルにして、スコアをゼロに戻して再育成を行っています。(図1参照)

第4ステップは、「デジタルマーケティングチーム」が発足、インサイドセールスを導入し、営業進捗を追う

図1:リード育成フロー

インサイドセールスは、アプローチの優先順位をつけるようにしており、優先度を1から4まで決めて対応しています。(表1参照)

表1:インサイドセールス対象の優先度

優先度1:アカウント以外の一般産業の中の戦略商材、注目市場に紐づく企業(大学関連、研究開発etc)
優先度2:過去にオフラインや他のイベントに参加、直近資料をダウンロードいただいたお客様
優先度3:上記にあてはまらないお客様
優先度4:販売会社や営業フォロー不要なお客様

セールスフォース上で優先度カテゴリー別に集計して、どのカテゴリーが多かったかを確認し、リード獲得・育成施策の見直しに反映させています。

インサイドセールス導入後に発生した営業担当者とのひずみ

インサイドセールスを介するようになり、今までなかった問題も出てきました。営業担当者の中に「自分たちが電話したほうがヒアリングできるし、商談がとれる。」と言う人が出てきたのです。営業とひずみが出始めたタイミングでミーティングを行い、お互いのズレをチューニングしながら進めています。共通の指標を持って具体的にその担当者やチームレベルの商談目標に対しデジタルマーケティングチームの供給数をどれだけにするか、落とし込めていないのが現状です。今まではお客様の温度感を共有していましたが、これからは数字をもって会話することで、建設的な議論ができるのではないかと考えています。

ゴール目標は年間120件の商談獲得

デジタルマーケティングチームのKPIは何ですか?

マーケティングとインサイドセールスが共通で追っているゴールは商談数で、年間120件が目標です。インサイドセールスのKPIはアポイントの獲得数と商談件数です。電話で見積り提出するケースがあるので対象に含めています。マーケティングのKPIはMQL数です。また、コンバージョン(CV)やスコアの分布もチェックしています。MQLが少ないのはCVが低いためで改善策を立てるといったことを、毎週のレポートで報告しています。

商談120件は達成できそうですか?

弊社は12月決算ですが、8月途中の進捗では商談数は4.5割、額が3〜4割くらいですね。ただし、営業に渡した商談の受注確度は高く、6割くらいは新規顧客です。まだまだ評価はこれからですね。額として小さいし、まだ上乗せの感覚しか持たれていないので、予算組みの中に入れてもらうインパクトが必要です。各営業チームのエリア戦略、営業が求めている顧客獲得にデジタルマーケティングチームが絡んでいかなければ、メリットを感じてもらうのは難しいです。

月1回、堀場グループのMA担当者でデータクレンジングミーティング実施

デジタルマーケティングの推進にデータ整備は欠かせないですが、どのように取り組まれていますか?

弊社以外の堀場グループでもMarketoを使っており、グループ全体でMarketo活用を推進しています。グループの中の4事業+情報システムのメンバーが集まって、週1回の定例会と月1回データクレンジングのミーティングを実施しています。そこでは、ハードバウンス、ソフトバウンス、タギング、メールの到達率を見ています。Marketoはリード数が課金対象なので、不要なリードは削除し、メールの到達率も基準値を切らないようにグループで見ていて、それを切っているプログラムがあれば、リードをチェック、来月までにデータをきれいにしてこようといった話をしています。

重複リードはほとんどなく、あっても手作業で修復できる範囲です。元々、Marketoにデータインポートする前に、プログラムの紐づけやデータ項目設定等のルールを決め、きれいなデータを入れています。ルールとプロセス、どういうフローにするかという手順までミーティングメンバーで考え、ガイドラインを作成しました。

データクレンジングは地道な作業です。グループ会社では、私も含めMA運用を一人で担当しているケースが多く、社内で聞く人がいないと孤独なものです。担当者同士集まって新しい取り組みを進める中で、ノウハウを共有しようと考えています。各社の進み具合は異なりますが、皆Marketoをきちんと使っていきたいと思っているので1社に偏ったルールづくりは行われていません。

月1回、堀場グループのMA担当者でデータクレンジングミーティング実施

第5ステップは、営業と一体化した「パイプラインマネジメント」へ

今後の課題を教えてください。

商談管理とパイプラインの管理を行っていくこと、パイプラインマネジメントを営業とやっていくのが次の課題です。ゴール目標を一緒に持ち、それに向けての役割分担を行い、追う指標をそれぞれ決めてやっていこうというのが第5ステップですね。

営業部とどのように共通の目標を持って進めていくのですか?

予算策定の段階から営業と一緒に考えます。売上目標達成のためのデジタルマーケティング活用、またその管理指標となる各プロセスの目標を考えていきたいです。現既存のお客様から売上げを伸ばすのも施策の一つですし、見えていないお客様から売上げをあげるのも一つです。そこをきっちり役割を分けて対応するべきだと思います。 上流側のプロセスはデジタルマーケティングチームが対応し予算を立てる、そこからブレイクダウンして受注数が出てくる、そういうところから組み立てて、パイプライン全体を管理することにチャレンジしたいです。受注目標に対し、営業だけで対応できる目標数字とデジタルマーケティング+営業で対応する目標数字を切り分ける必要があると思います。営業だけで作る数字と、デジタルマーケティングの供給量に関する会話が全体でできるようになってくれば、営業も生産性が上がり、注力できることが増えるでしょう。我々も施策をブラッシュアップしていけます。こうした考え方の働きかけを、いろいろなチームや上層部に提案していこうと思います。

デジタルマーケティングチームは、営業組織の中にいるからこそメリットあり

志知さんの社内提案力はすごいですね。営業との調整が一番大変ではないですか?

マーケティング本部が独立した部門になっていないのは製造業ではよくあることですが、営業に近い位置づけでやっているからこそ数字もシビアに見られ、営業と一緒に活動できるメリットがあります。私も営業出身で数字に対して貪欲ですし、営業時代は数字が上がるのがうれしかったものです。現在は、直接お客様には会えないですが、相関性のある数字の達成を目指しているという点は、営業時代とあまり変わらないと思っています。だからこそマーケティングは楽しいですし、もっと売上げの貢献もしていきたい、そしてそういう組織にしていきたいです。お客様も変化してきていますし、これから売上を上げていく中で営業の生産性を上げられるか、その仕組みの一つを構築していくのが私のミッションです。

表2:堀場エステック様におけるデジタルマーケティング推進ステップ

デジタルマーケティングチームは、営業組織の中にいるからこそメリットあり

プロフィール

志知 文 氏
株式会社堀場エステック
営業推進部 デジタルマーケティングチーム チームリーダー

株式会社堀場エステック入社後は、営業部に所属。2014年より営業推進部へ異動となり、同時にマーケティングオートメーションツールMarketoを導入し、デジタルマーケティングを推進する。現在、「デジタルマーケティングチーム」のチームリーダーとして活動中。
→ 株式会社堀場エステック

プロフィール

インタビュー後記

堀場エステック様の社是は、『おもしろおかしく(Joy&Fun)』。オフィス受付にも大きく掲げられています。 この社是には、「社会人が働く上で20代から60代という人生で一番いい時間を会社で過ごしているので、その時間を、おもしろおかしくしていくことで人生が豊かになる。」という創業者の堀場雅夫氏の思いが込められています。海外のホリバリアンには、『Joy and Fun』として浸透しているそうです。志知氏のお話では、「社外のお客様や仕入れ先から『おもしろおかしく』してもらうのではなく、社員自らが仕事を『おもしろおかしく』する、そう思いながら日々取り組んでいます。皆、この社是を気に入っています。」とのこと。志知氏が様々なハードルを乗り越えて、上司、営業を巻き込みながら粘り強くデジタルマーケティングを推進してきたプロセスは、まさに『おもしろおかしく』仕事に向き合っているホリバリアンの姿だと実感しました。
インタビュー実施日:2019年8月9日

広富 克子

取締役/執⾏役員

広富 克子

コンテンツマーケティング支援

神⼾⼤学経営学部卒業。住友ビジネスコンサルテイング株式会社⼊社。マーケティングリサーチ・コンサルティング業務を中⼼に活動し、その後AJS(オール⽇本スーパーマーケット協会)にて、プライベートブランドの商品開発・営業に従事。2003年10⽉、株式会社パワー・インタラクティブ⼊社。2006年4⽉、取締役執⾏役員に就任。全社営業戦略を統括する。

TOP